2024-04-04から1日間の記事一覧

痣 第10回

一学期は沢木にとっては目新しいことばかりでまたたく間に過ぎていった。職員室でそれとなく見聞きするところによると、受験に関係する教科では到達度を測るために小テストが繰り返されているようであった。教科主任の川口はよく自分のテストで成績の良くな…

痣 第9回

戦前に開催された博覧会の跡地に作られた都市公園の緑の中に中央図書館はあった。二階へ上る階段の途中に踊り場があり、半円形に外に向けて張り出した大きなガラス窓があった。窓の外を見ると高さが二メートルを超すと思われるハナミズキが白い花をつけてい…

痣 第8回

新学期の授業が始まって一カ月が経過した。 塵ひとつなく磨き上げられたリノリウムの廊下を歩いていると、 いったい自分はどうしてここにいるのだろうという不思議な感じに 襲われるのであった。 渡り廊下の窓から外をみると運動場のすぐ脇には田畑が広がっ…