詩歌それは言葉の宝石

ヴェルレーヌの詩,『落葉』上田敏訳 と 与謝野晶子の短歌に寄せて

 

  落葉

秋の日の
ヰ゛オロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。

鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。

げにわれは
うらぶれて
ここかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。

与謝野晶子

金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に

詩歌は言葉の宝石、高貴ではあるけれど高価なものではなく誰もが平等に享受できるもの、そのようなものはほかには多くの例を挙げることは難しい。

何気なく過ぎていくはずであった秋の一日、その時間に独特の意味を与え、私たちの心を潤し慰め、いつしか生きていく勇気を思い出させてくれるもの。

逝ってしまったひとを思い出す心に寄り添い、静かな鎮魂の思いを一緒に奏でてくれる二つの宝石、ひとが言葉というものを持っていることの奇跡のような有難さを思う。そしてそれを生み出してくれた先人と私たちは繋がっているということが、私たちの命の有限さを忘れさせる。言葉を生み出し育ててきた私たちの魂は滅びることはないという静かな確信が潮のように私たちの心を満たしてくる。