樹 第7回


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先日はゴンズイという木をあらためて知った。実に奇妙な名前である。これは象牙のような触感をもつ赤い美しい実がなっていた。小さな卵のような形の葉には周りに鋸のような切込みがあり、実をつけている枝も薄い赤に染まっている。そしてリンボク、この木も雪のような白い花をたくさん付けている。近くに寄って匂いを嗅いだが少し尖った鼻を刺す臭いがした。草木の花とは違う、木の幹がもっている強い精油を感じさせる匂いである。今までは気付かなかったが、このような美しいものに囲まれていたのだと侑子は今さらのように感じ入るのであった。その図鑑のおかげで彼女はキビタキの周りでそよいでいる木々を自分のすぐ隣で生きている隣人のように親しさをもって描くことができた。

  次回に続きます